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住友ゴム 米国タイヤ工場閉鎖の衝撃

住友ゴム工業は2024年11月7日に米国タイヤ工場の閉鎖を発表しました。直ちに生産を停止するそうです。

住友ゴムのサイトにもその情報が公開されました。以下のとおり。

 

これは倒産ではありません。従業員を解雇して、直ちに生産を停止して、その後12-24カ月かけて、この米国工場の会社を解散するそうです。 直ちに生産停止、その後解雇とは米国らしいやり方ですね。しかし原材料のサプライヤは大変でしょうね。いままでの供給契約がありましたから。それについては個別に相談しましょうとのこと。今回、この工場閉鎖で、構造改革費用、解雇費用、中途解除違約金費用などで700億円強の損失を計上するとのこと。経営陣は大きな判断をしたのでしょう。今後米国市場へのタイヤは日本、タイから出荷していくのでしょう。トランプ大統領になるからインフレが進むので、工場閉鎖を決定したのか?タイから米国への住友ゴム製タイヤのアンチダンピング税が下がったから決めたのか?

この工場閉鎖の意味は、米国でそれだけ、人件費が上がって米国でタイヤを作ること自体がむずかしくなってきたということです。今年はTOYOTIREも米国ケンタッキー州で自動車用防振ゴムを長年生産していましたが、その工場閉鎖を決定しました。当社関連会社も原材料をこの防振ゴム工場に販売していましたが、残った原材料の米国での在庫品を最終的にTOYOTIREに引き取ってもらう交渉をして、そのようにしてもらいました。 

米国は人件費が上がり、インフレが進み、タイヤ、ゴム製品を作り利益を出すのが難しくなってきています。特に古い工場、労務費が高い、北部、中西部の州は大変です。米国の工場は生産をメキシコに移転してきています。実際米国のゴム練り工場も稼働率がさがってきています。一方メキシコ工場は稼働率が上がっています。

この住友ゴムの工場は元はGOODYEAR、その前はDUNLUPのタイヤ工場です。NewYork州Buffalo市にある古い工場です。1923年稼働開始で、月5000トンほどの新ゴム量消費する工場です。2015年にGOODYEARから住友ゴムが買収しました。100年以上経過する古いタイヤ工場で、ある人によれば、中は博物館みたいなタイヤ工場だとのこと。住友ゴムはここ数年設備更新に毎年数100億円投資していましたが、ここ数年は毎年100から200億円赤字をだしていました。

写真(SumitomoRubberUSAのサイトより)のとおり、ハイウェーに面した工場です。かつて私は米国駐在していた時に、事務所がある米国オハイオ州アクロン市からナイアガラ滝に、日本から来られた取引先の方と観光で行くとき、このハイウェーを通るので、よくここがGOODYEARのタイヤ工場ですよと説明した、思い出深い工場です。下の写真の左上端に見えている川はナイアガラ川です。

この工場を閉鎖するかもしれないという噂は前からありました。加藤事務所は某大手証券会社主催の講演会、勉強会で、国内のいろいろなファンドマネージャー、証券アナリストらを前に、タイヤ各社の現状、今後の予想をいうテーマで1時間ほど講演をやっていますが、今年夏の講演では、この工場を今後どうするか?閉鎖するのかという質問がアナリストらからありました。確か、 いままで設備更新をしてきたがGiveUpもあり得る。場合によっては工場閉鎖、他社への売却、また新工場を建設して移設等の可能性もあり、その可能性はXX割、XX割、XX割、場合によっては多額の損失計上もあり。と回答したはずです。同じ質問は昨年の講演でもありました。証券アナリストはよく分析されていましたね。

タイヤ工場が閉鎖されるとその機械(バンバリー、押出機、カレンダー、成形機、加硫プレス、タイヤ試験機)は中古機械として売却されます。場合によっては売却オークションが開かれます。またはRubberCityMachinery社やReliableRubber&PlasticMachinery社らがこれらの中古機械を購入して、部品交換してチューニングして、ノンタイヤ、工業用ゴム部品会社に Rebuild Rubber Machineとして販売します。 よほど古い機械でない限り中古ゴム機械としてまた再生されます。リサイクル、サステナブルですね。

今年加藤事務所、加藤産商はタイの某日系タイヤ工場閉鎖で、バンバリー4台、押出機数台、カレンダー2台、タイヤ加硫機100台まとめての中古機械の競売売却に入札して応札しましたが、これは他社に決まってしまいました。この世界には、あるタイヤ工場が閉鎖されると、その工場にある機械一式全部を買取して、売れない機械は鉄スクラップとして売り、売れる機械は、チューニングして、また中国やインドのタイヤ会社に販売する、そういう会社が存在します。今回はその会社と組んで応札したのですが、機械解体費用の見積もりが難しく、失注しました。

日系米国タイヤ工場の閉鎖はいろいろな意味を持っています。