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トランプ関税日本品15%課税でも、日本ゴム産業はまだ心配。日本ゴム工業会にて講演しました

表紙の写真は7月23日に米国政府の公式X(旧ツイッター)The White Houseに載った写真です。日本から米国に輸入される品、自動車、自動車部品を含め、15%輸入関税で決定、決着になりました(但し鉄鋼、銅は含まれずまだ課税50%のまま、さらに7月27日現在、協議合意文書が公表されていないため、最終的にどう正式に決まるかまだちょっと心配な状態ですが)。しかしまだ日本の大手ゴム会社は、この日本品15%課税には満足していません。心配なことがまだたくさんありません。

 それは、すでに米国に輸入されている日本ゴム会社(日系ゴム会社)のゴム、タイヤは50%以上がアジア、メキシコで生産されているからです。日本からではありません。日本から米国にもっていっているゴム製品、ゴム部品、タイヤは、ブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴムの高級タイヤや、TOYOTIRE製タイヤぐらいで、ほとんどは、 タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、メキシコの日系ゴム工場で生産されていて、それが米国向けに輸出されているからです。タイヤでいえば、ブリヂストンタイ工場、住友ゴムタイ工場品、また自動車用ホース、防振ゴムでいえば、タイから米国の日系自動車工場向けにたくさん供給されています。7月27日現在、ベトナム、フィリピン、日本と、米国間以外、まだトランプ関税の最終的な関税率がきまっていません。15%より高い関税がすでにかかっています。

これらのアジアとメキシコから米国に輸入されるゴム部品、タイヤのトランプ関税が決まらないと、日本のゴム、タイヤ会社は安心できません。正直言って、日本から米国へのゴム部品はまだごく一部だと言っていいでしょう。

但し日本から米国への自動車の輸入関税が15%で決着したことは安心材料です。しかしこれまでたった2.5%だったものが15%になるのですから、いくら円安で自動車会社の利益が大きかったとはいえ、この負のインパクトは大きい。今後日本の自動車生産台数が減ることを懸念します。特に群馬地区と広島地区は、心配です。

7月16日に日本ゴム工業会で資材関係の講演をしてきました。テーマは、今後の原材料動向とトランプ関税の影響でしたが、トランプ関税への関心が高かったのか、今回の聴講者数がいつもより、多かったようです。多くの大手、上場ゴム部品製造会社の購買関係の方の聴講をいただきました。

以下のとおり、講演の一部を公開します。

講演での説明、34ページ目、7月16日現在の話

 7月16日の講演では、自動車、自動車部品には25%のトランプ関税がかかることになっていました。その25%の自動車部品にゴム部品はどこまで対象になるのでしょうか?それを解説しました。

印象としては、実際自動車部品の対象になるゴム部品は少ないのではと思います。タイヤはすべて対象になりますが、自動車用油圧ホースはほとんど金具なしで米国に輸出され、米国で金具をとりつけていますし、あとは、自動車に使われる「メカニカル部品」です。メカニカル部品とは?どこまでがメカニカル部品なのか?

7月23日に決まった合意ではこれらも15%課税になりましたので、その結果、自動車部品か、それ以外かは、差がなくなりました。

7月16日現在の話です

実際、メキシコに展開している日系ゴム会社に話を聞くと、どこもまだ、メキシコで生産したゴム部品を米国に送っているが、実際にはまだ25%課税されていない。との声も多く聞かれます。USMCAの申請、適用(米国製の原料をつかってゴム製品を作ると、その米国製原料の割合で、トランプ関税が免除される制度)されているケースも多いようです。

またインド製カーボンブラックが米国に輸入されるケースでは、インドPCBL社製カーボンブラックの原料(FCCボトム油)が100%米国からインドに輸入されていたので、申請により米国輸入時にトランプ関税がかからないとの話も聞きました。

日本からの15%課税は決まったとしても、メキシコ、タイ、インドネシアから米国に入るゴム部品、タイヤが何%のトランプ関税になるかが一番の関心事になります。

米国にゴム製品の製造業を戻すにしても、人件費が高い、さらに、ゴム工場で働いてくれる新規の人が見つからない。と言われているので、実際製造を米国に移すには、相当自動化しないと無理、今の製造工程のままだと米国へのゴム製品製造回帰は無理だと思われます。

トランプ関税は複雑で、(急に作った関税なので、制度の不整備部分が多く、抜け道?特別申請があり?)実際の運用時には、まだまだ分からないことだらけと思えます。今後どうなるか注視していく必要があります。