マーケット加藤’s EYE

ラバー雑学散歩 ~ゴムとチョコのビターな関係?

1月終わりくらいから気温がぐっと寒くなり、通勤時の外気が強制的に眠気を覚ましてくれますが、寒さがとにかく苦手な輩は、誰よりも春を待ちわびているに違いありません。こんな時期にもうひとつ、男性の心を少なからず騒がせた日がありました…そう2月14日のバレンタインデーです。

バレンタインデーに女性から男性へチョコレートを贈るという習慣は日本独自の文化です。海外では「愛や感謝を伝える日」として、恋人や家族、友人がお互いにプレゼントを贈り合うのが一般的で、チョコレートは添え物程度か、花束やメッセージカードがメインになることが多いです。日本のこの風習は、1950年代にチョコレート会社が行った販促キャンペーンがきっかけで広まり、1970年代以降に定着しました。

バレンタインデーで大活躍のチョコレート。しかし、それがこの日だけ求められているわけではありません。昔から1日中社内で資料などを作成して、疲れた時のパートナーはチョコレートでした。糖分を取ることで頭が覚醒し、仕事への集中力が蘇ることはみなさんもご経験があるでしょう。

実はチョコレートの原料であるカカオと天然ゴムは、同じ国で作られていることもあります。

チョコレートの原料はカカオで、その生産国第1位はコートジボアール、2位がガーナで3位に少し離れてインドネシアとなっています。

そう、某お菓子メーカーの『チョコレートGhana(ガーナ)』は皆さんよくご存じですよね!西アフリカのコートジボアールとガーナがカカオの最大生産地で、両国ともカカオの輸出は主要貿易品目となっています。

そんな中、ここ数年でコートジボアールでは天然ゴムの生産量が増えていて、今ではEUDR(EU森林破壊規制)に対応できるまでになりました。しかしながら、天然ゴムの生産量が増える一方でカカオの生産量が減ってきている現状を皆さんはご存知でしょうか。

なぜカカオ農家は天然ゴムへ移行しているのか? (2023年4月25日(4月28日更新) 日経新聞より抜粋)

【収入の安定性】

• カカオ:年1〜2回しか収入がない。剪定・病害虫対策など手間が多い。(日本チョコレート協会、国際農研より) 

• 天然ゴム:毎月収入が得られて、農家にとってキャッシュフローが安定するため、生活が安定。労働コストが低い。管理が比較的容易で、労働負担が軽く天然ゴムは「安くて楽」という農家の声が多い。(News in Levelsに記載)

【気候変動の影響】

• カカオは高温・乾燥・豪雨に弱く、近年の気候変動で不作が増加。(国際農研に記載)

• ゴムは比較的気候耐性が高く、農家がリスク回避として選択。

コートジボアールの天然ゴム、カカオの生産量の推移を下表でご参照ください。

(国際ゴム研究会国際連合食糧農業機関より抜粋)

グラフを見ると、天然ゴムの生産量が急激に伸びて、今後は天然ゴムがカカオの生産量を追い抜く勢いに見てとれます。

コートジボワールでは、収入の安定性・労働負担の軽さ・気候変動リスク回避を理由に、カカオから天然ゴムへの移行が急速に進行。 天然ゴム生産量は2019年以降わずか数年で大幅に増加し、世界3位の生産国へと躍進しております。この動きは世界のカカオ供給に影響し、チョコレート価格の上昇リスクを高めていると言えるでしょう。

さて、これらのことから世界的視点で今後どんなことが予測されるでしょうか?

カカオは気候変動の影響を強く受ける作物で、近年は不作が続いており数量的には波がありますが、それほど落ちていません。その一方で、ゴムは気候耐性が高く、収入も安定しているため、農家の転換は今後も続く可能性があります。

この動きは、必然的に世界のチョコレート市場にも大きな影響を与えます。カカオ供給が減れば価格は上昇し、チョコレート製品の値上げにつながり、すでにその兆候が日本でも見られます。バレンタインデーでなくともカカオの価格が高止まりしており、日本の菓子メーカーなどもカカオの使用量を減らしているようです。

一方、天然ゴム生産国連合(ANRPC)の情報によると世界の天然ゴム市場は70万トンの供給不足となっており、このような状況もコートジボアールでの天然ゴムの生産を促進する後押しとなるに違いありません。

カカオの価格推移を見ると、2024年頃から暴騰したかと思えば、2025年後半から暴落し、2023年頃までの水準に戻ろうとしています。そんな不安定性に疲弊したカカオ農家は、カカオ栽培に魅力を失い、今後比較的安定した天然ゴムの生産に変わっていく可能性が高いと思います。コートジボアールでの天然ゴム栽培がどの様に推移していくのか、今後目が離せません。

近い将来、バレンタインデーにはハート形のチョコレートの変わりにハート形のゴム風船が送られる時代がやってくる!? まさかね…(笑)

(参考資料出典)

  1. 日本チョコレート・ココア協会
  2. 国際農研
  3. News in Levels
  4. 国際ココア機関
  5. 国際ゴム研究会
  6. 国際連合食糧農業機関