米国、イスラエルによる、イラン攻撃が始まり、イランはクウェート、サウジアラビア、UAE, 湾岸諸国への攻撃を始めています。またホルムズ海峡は実質的に封鎖されています。これがゴム、タイヤ業界にどう影響をあたえるか?
1)原油価格が上がり、当然ナフサ、ブタジエン価格も上がると予想されます。3月3日のナフサ価格は2月27日の価格に比べてすでに$100/MTも上がりました。これは¥10000/KLの値上げです。EPDMの生産コストに直すと¥25/㎏ぐらいのコストアップになります。もちろんこれがずっと続くかわかりませんが。1-3月の国産ナフサ価格はすでに1,2月の輸入価格はきまっていますので、あまり変わらない。この価格が高いナフサは4月以降の輸入ですから、4-6月のナフサ価格が大きく上がることが予想されます。合成ゴムでいえば、7月価格改定分です。ブタジエン価格もナフサ価格がベースになりますから、現在のアジア価格US$1300/MTがさらに上がること必至です。
2)ナフサが足りなくなり、国内ブタジエンが不足するかも。石油化学工業協会のサイトによると、 https://www.jpca.or.jp/statistics/annual/nafusa.html 、石油化学原料のナフサは2024年では61%が輸入ナフサです。どこから輸入されているか?輸入ナフサの30%がUAEから,22%がクウェートから、15%がカタールから、3%がサウジアラビア、その他3%から。つまり74%が中東からの輸入で、これが現在ホルムズ海峡封鎖で輸入できなくなっています。61%x74%つまり、日本で使用する45%のナフサの供給が、中東からの輸入品で、これが現在輸送が止まっています。ナフサは原油と違い、法律による国家備蓄はありません。よって民間でせいぜい1か月分ぐらいしか在庫がないでしょう。このまま海峡封鎖が続くと、輸送期間を考えても1.5か月後には、45%のナフサ入手が止まる。当然国内で原油を分解してナフサを作ることができますが、同時にできるガソリン、灯油の需要次第ですから、ナフサだけを作るわけにもいきません。当然ナフサを分解して作るブタジエンも同様です。ブタジエンはアジアから輸入ができますが、当然価格はあがるでしょう。よって1から2か月先の合成ゴム原料(SBR,BR,NBR,EPDM.CR)が不足することが大変心配です。ただこれらの合成ゴムは通常3か月分ぐらいは合成ゴムとしてメーカー在庫があります。ただSBR,BR はもっと在庫量が少ない。ホルムズ海峡の封鎖は1ヵ月以内に解消すればなんとかなるでしょう。
3)イランの合成ゴム、カーボンブラック、タイヤ工場はどうなっているか? 以下の表がイランにある合成ゴム、カーボンブラック会社の生産能力です。タイヤ会社も9つもあります。ゴム会社(ウェザーストリップ、ホース、防振ゴム、シール)もたくさんイランにあります。


イランの合成ゴムは日本には輸入されていませんが、中国では販売されています。

2025年9月の中国 RUBBER TECH CHINA2025展示会にてイランの合成ゴム会社 Takht-e- Jamshid Petrochemical社のブース。SBR,BRのサンプル展示あり。
2025年に中国の展示会で入手したカタログは以下の通り


これらの合成ゴム工場は無事でしょうか? 今のところ、イスラエル、米国は軍事施設だけを攻撃しているので、この石油化学工場は損傷していないと思いますが。
これらのイランのゴム材料は、日本では使用されていません。これらはインド、中国、ロシアには輸出されていると聞いてます。中国のSBR.BR工場はまだまだ生産能力に余力がありますから、このイランの合成ゴム輸出が止まっても世界の合成ゴム需給には関係ないと思います。
4)サウジアラビアの合成ゴム工場がイランの攻撃で損傷すると、EPDMの供給が心配です。サウジアラビアにはEPDM工場がSABIC(EXXONMOBIL技術でSABICグレードとEXXONMOBILグレードの両方を生産中、生産能力年10万トン)とPETRO RABIGH(住友化学技術で実際にはALANXEOグレードを生産、生産能力年7万トン)があります。これらが攻撃で損傷を受けると、特にEXXONグレードの世界市場への供給が止まり、不足します。SABIC品とPETRO RABIGH品は日本にはほとんど輸入されていません。これらSABIC,PETRO RABIGH品は中国、インド向けがメインです。しかしこれが止まると、さすがに世界のEPDM需給バランスがくずれて、どこかで不足するでしょう。3月3日現在は、これらのEPDM工場は無事の様です。火災損傷をさけるために、わざと停止しているかもしれません。
加藤事務所の加藤はいまから11年前に大阪のJ社の協力を得て、イラン、テヘランに訪問して、ベトナム製天然ゴムの営業をやってきました。当時はイランは米国の制裁があったとはいえ、結構豊かな国でした。きいていた話と違い、豊かな文化があり、自動車生産があり、街にはたくさん自動車が走っていました。日本車に結構見かけました。日本の合成ゴムも輸入され、現地のゴム会社に販売されていました。タイヤ会社数社を訪問しました。そのレポートは https://gomuhouchi.com/serialization/67243/ をごらんください。
2015年当時の写真を以下の示します。










ホテルのロビーですが、ハメネイ師の写真が飾ってありました。

街にはケーキ屋もあり、ケーキ、アイスクリーム、ラテがおいしかった。文化がある街でした。


タイヤ会社の受付に飾ってあったタイヤです。元ブリヂストンの工場だったこのDANA工場で配合表をみせてもらいましたが、英文字2文字+数字というブリヂストンの材料コードそっくりが当時も使われていました。

飛行場出発ロビーにて、 中東行のフライトが沢山あり。今はそこを攻撃するとは?
米国がいくら攻めても、イラン国民は、結構しぶとい。誇りがある。ペルシャ帝国であったという自負がある。文化も、工業生産のレベルと高い。(11年前ですが)。今までの政権と、イラン国民感情とは別のような気がします。
とにかく、ホルムズ海峡の封鎖だけはすぐに解除して、船の通行が安全に行えることを切に願っています。

