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ゴムタイヤ業界 イラン戦争の影響(第三報)3月29日現在

中近東からのナフサ輸入は中断されたままになっています。これによりゴムタイヤ業界への原材料の供給面、価格面での影響がでてきています。

供給面での問題:

合成ゴム:合成ゴムの原材料はブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン等がありますがこのうちブタジエンの供給が減ってきています。また定期修理中の石油化学コンビナートもあり、エチレンクラッキング装置は一度止めると再稼働に数週間かかるため、定修後の再稼働を延期しているコンビナートもありブタジエン供給の予測が難しくなっています。合成ゴム出荷は、どの会社(CR以外)も出荷量を調整中(いわゆるアロケーション状態。通常量より多い注文はNG)ですが、輸入ナフサ不足で停止した合成ゴム工場はまだありません。

鹿島地区:まもなく定修へ。よって今は合成ゴムEPDM工場は在庫を十分貯めている時期なので、今は大きな問題はなし。但し今後エチレンクラッキングの低稼働がありそうで、出荷量調整(通常より多い注文はNG)あり

千葉地区:エチレンクラッキングの稼働率が落として稼働中、今後定修もあり。よってこの地区の合成ゴムは出荷量調整中(通常より多い注文はNG)

川崎地区:ENEOSエチレンクラッキングは通常稼働中 ブチルゴムやSBR,BR,NBRには大きな問題はなしか? もちろん出荷量調整中(通常より多い注文はNG)

四日市地区:定修中ですが、東ソーのエチレンクラッキングの再稼働が延期に。再稼働時期が未定であることが問題。よってこの地区のSSBR.SBR、NBR生産が出荷制限中または調整中。定修前に貯めた在庫から出荷。他地区からのブタジエン輸送には調整に時間がかかっている

徳山地区;出光エチレンクラッキングは稼働率を下げているが、この地区の合成ゴム工場SSBR、BR、NBRは、以前からブタジエンソースを徳山だけでなく、千葉、大分から、さらに輸入品を波方石化ターミナルタンク(6000トン)経由供給をうけているので、すぐには生産停止は予定されていない。出荷調整中ではあるが。

大分地区;ENEOSエチレンクラッキングは定修中であるが、4月上旬に再稼働を予定している。かつ輸入ブタジエンを受け入れる港あり。よって合成ゴムSSBR、BR生産に大きな問題なし。

カーボンブラック:供給に特に今は問題なし。但し石油系(エチレンボトムオイル、FCCオイル)の原料が多いカーボンブラック会社(複数)は、今後(2-3ヵ月後?)に問題(供給と価格面)がでる可能性あり。どの会社も値上がりは必至。

輸入の合成ゴム:Alranxeo合成ゴムに一部フォースマジュール発生。世界のどの合成ゴム会社も、自国、自国地域への供給を優先しており、輸出枠は減らす。フォースマジュール宣言を発出してきている。

プロセスオイル:供給にはまだ大きな問題はでていない。価格は今後上がる。一部の商品に欠品、納期遅れが発生始めている。

ゴム薬品:大きな問題はまだないが、フェノール系の老化防止剤が5月以降の生産に問題がでるとの話あり。(三井化学からのフェノール誘導体の供給は止まる?)。輸入品のゴム薬品は、供給が絞られてきている。

可塑剤、ステアリン酸、粉末硫黄、酸化亜鉛、その他加工助剤:供給面では今のところ問題ないと思われるが、今後値上げはすぐに出ると思われる。粉末硫黄は、原料の石油からの回収硫黄がすでに不足しており、アジア地区で高騰(価格が2~3倍に)しているので、4月から値上げとなっています。

溶剤:これが大問題。4月中旬以降、溶剤(BTX=ベンゼン、トルエン、キシレン、 MEK)が供給が止まる。注文が受け付けてもらえないという話が続出。溶剤生産が止まっているわけではないが、生産量が減少し、それが、ゴム、タイヤ会社への供給減となっています。 同じく接着剤、加硫接着剤メーカーも溶剤がないと作れない。 タイヤ会社、ゴムブランケット会社、ゴム糊会社が大変そうです。

ゴム別で考えると、EPDMは今は大きな問題は起きていない。SSBRとSBRが問題。NBR、BRにもちょっと制限が出てきている。CRは国内品は問題はでていない。シリコーン、HNBR,フッ素ゴム、アクリルゴム、その他は、今は大きな問題なし。

価格問題:10-12月の国際ナフサ価格は¥65600/KL. 1-3月の国産ナフサ価格予想は¥65200/KLぐらい。4-6月の国産ナフサ価格は、アジアナフサ価格が今の$1100/MTが4-5月まで続くとすると、¥100000/KLぐらいになります。よって5月からの価格は、今とほとんど変わらず、しかし7月からは、6月までの価格に比べて、EPDMだけで¥90/kgUP,SBR,BR,NBRもたぶん¥80~140/kgUPになりそうです。(この瞬間のナフサ、ブタジエン、スチレンモノマー、アクリロニトリル価格だけをベースにすると、EPDMは¥110/kgUP,SBR¥130/kgUP, BR¥150/kgUP. NBR¥120/UPぐらいになります)。だからといって6月までにより多く買おうとしてもすでに出荷制限をしているので、先取りももう無理です。どうも3月10日ぐらいまでは先取りできたはず。

樹脂の値上げは始まる:PP、PEはフォーミュラ価格ではない場合が多く、4月1日から¥80~90/kgの値上げの発表がすでに3月19日ごろから始まっています。またオレフィン系エラストマー(PP、EPDM、オイルが主原料)の4月1日からの値上げも発表あり。合成ゴムはフォーミュラで価格が決まることが多いが、樹脂は、7月まで待たずに、すぐに値上げ発表がありました。これから交渉であるが、かなり大幅値上げですから交渉がまとまるか?しかし玉が足りないから、値上げを拒否するのであれば、今回は即出荷停止となります。またサーチャージ制を導入した会社もあり、今だけ大幅に上がるが、原料高騰が止まれば、また供給制限が解かれれば、すぐに価格は戻す。ベース値上げではない。今回はこのやり方がリーズナブルでしょう。

海上運賃の値上げ、船の遅れが発生:予想していた通り、アジア地区でも燃料油の価格UPにより、船運賃の値上げが始まりました。コンテナ20FTにつき$200程度の値上げが多いが、遠距離航路であると、当然もっと上がります。また船の遅れ、抜港がでてきました。アラビア湾に船と空コンテナーが滞留しており、船の航海スケジュールが予定どおりにならなくなりました。この件はたとえホルムズ海峡が開放されても、半年ぐらいは正常状態には戻らないと予想します。航空運賃もまもなくジェット燃料油コストアップで大幅に上がるでしょう。

日本のゴム、タイヤ原材料の話をしましたが、世界最大のゴム練り会社の幹部の方と話をすると、日本はまだいいほう。韓国、シンガポール、タイ、アジア各国の石油化学工場の方が、どんどんフォースマジュール宣言を出し、北米、EUへの玉の供給が止まり始めている。欧米と韓国からの合成ゴム輸入で問題が発生しているそうです。一方米国内で生産されている合成ゴムは中近東の原油、ナフサを原料にしていないため、供給には問題がありません。但し価格は上がっているとのこと。

タイヤ会社も自動車会社にタイヤを販売していますがそのタイヤの価格は、原油と天然ゴムの市況価格をベースに決めています。今回は原油は日本はまだ半年は在庫があり、それほど大きく値上げになっていませんが、合成ゴムの原材料である、ブタジエン、エチレン、プロピレンは、原油の値上がり以上(だいたい原油の値上がりの倍以上の値上がり)で市況価格があがってきています。それは日本のナフサは45%が中東からの輸入ナフサで、これが供給停止状態であれば、それは原油以上のナフサ不足でナフサ価格があがっているからです。石油化学会社は現在必死に、米国、EU, アフリカ、インドからナフサを輸入しようとしています。これらは中近東産より量が少なく、輸送運賃も高く、割高な価格になっています。たぶんナフサの輸入はめどがつくのではないか?ただし高い高いナフサです。

よって自動車会社へのタイヤ販売価格が、従来の原油価格連動では大きな損失がでてしまいます。本来はナフサ平均価格との連動なのでしょう。今回タイヤ会社は、自動車会社に特別申し立てをするのはないかと思います。自動車ゴム部品の自動車会社への価格は、毎回交渉できまりますが、原油価格連動ではないでしょう。せめてナフサ価格連動であれば、納得がいきます。

今のところ、ナフサ不足も、中近東以外の国からのナフサ緊急輸入と、国産石油精製のフル生産で、なんとか乗り切れる可能性があります。4月末までは何とか在庫調整、原料確保によって、供給のめどがたりつつあります。5月以降の供給は、未定、回答できないとの声も多いようです。

よってゴム原材料全体が今すぐに供給停止にはならないと思います。但し一部の石化製品(例えば溶剤、BTX他)は、玉切れを起こす可能性があります。どこかで自動車生産の停止(車種別に月に数日間停止とか、全面的な長期間の停止ではなく)は十分起こりうると考えます。タイヤ、ゴム部品の供給停止によるものではなく、他の部品のせいで自動車生産が止まることです。すると需要がその分へれば、全体でバランスが取れる可能性もあります。

問題は5月上旬以降です。これはまだゴム原材料が十分に調達できるかどうかわからない。ゴム配合でたった1つの配合材料がなければ、そのゴム部品は生産できません。同様にたった1つの部品がなくても、自動車生産は止まります。これがまだわからない。欠品は合成ゴム、カーボンブラック、プロセスオイルではなく、添加剤、加工助剤、量が少ない配合剤の方が心配です。これらの中小製造会社ですと、原料会社からまず先に供給を止められる。さらに代替購入ルートをわからない。考えていなかった。どうしたらいいかわからない。という事態が起こりうるのです。

よって今は供給のためには常にベストを考え、どの原材料の供給にも気を配り、漏れがないように、検討を続けるしかないのでしょう。大幅価格UPが4月以降(特に6,7月から)がきますが、今は供給の方が大事です。価格の話はあとです。ゴム部品、タイヤも価格改定をせざるを得ません。常に先に何が起こりそうかを考えましょう。皆さんでなんとか乗り切りましょう。