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揺れるEUDR規制 どうなるか? (11月15日現在)

ここにきて、2025年12月末で大企業で規制が始まるEUの森林伐採防止規制のEU委員会案が承認時にどうなるか、まだわからない状態になってきています。10月にEU委員会案が決まり、EU理事会、EU議会に上程されることになりましたが、EU議会の委員が、この案に反対意見を言い出しています。

ロイター電 11月11日では以下の記事配信をしています。

[ブリュッセル/ロンドン 11日 ロイター] – 欧州連合(EU)加盟諸国は、今年末に予定していた森林破壊防止規則(EUDR)の適用について、さらに1年延期することを模索している。ロイターが11日に閲覧した10日付の交渉草案で明らかになった。
草案によると、大手企業への適用を来年2026年12月30日に、中小企業を27年6月30日に、それぞれ延期する可能性がある。
EU欧州委員会は先月、中小企業などに関する順守基準緩和を提案したが、適用時期の延期には踏み込んでいなかった。
EUDRの柱は、ココア、パームオイルなど森林破壊と結び付く一次産品の輸入を禁止すること。一部の産業や国からは禁止措置について、コストが高い上、物流の観点から実施が難しいとの声が上がっている。

環境派の委員は、ここで再度実施を延期すると、なし崩し的にEUDR規制が骨抜きになってしまい森林破壊が止まらなくなる。これ以上の再延期はありえないと主張。一方産業界を代表する委員は、2026年7月から本格的に実施するにしても、木材、紙、牛肉はEUへの輸入が困難になる、輸入が止まる可能性があり、もっと準備に時間をかけてほしいと主張。EUは環境派が強い地域ですが、最近は右派の政党がふえてきていますので、微妙です。

天然ゴム、ゴム業界からみれば、この2年、いや3年前からコスト、人手をかけて準備してきたので、今回は早く始めてほしい。EUDR規制が骨抜きになったらそれこそ大損失だ。と考えている会社が多いようです。EUDR合格天然ゴムはプレミアム価格でそれだけ高くになっています。ほとんどの大手タイヤ会社や、上場クラスのゴム会社で天然ゴムを使用している会社(防振ゴム、農耕用ベルト、コンベアーベルト用の天然ゴムが多いようですが)はすでに2025年6月から、また準備早かった会社は2024年末から、EUDR合格の天然ゴムを購入して、タイヤ、ゴム製品を製造始めています。原料がコストアップになっています。

内心は、もう早く始めてくれ。再度延期はあり得ない。 EUのタイヤ会社も、このEUDR規制は中国のいい加減なタイヤをEU市場に入れないための手段だと考えているようです。もっとも中国のタイヤ会社は、EUDRの輸入時提出ファイル(GeoJSONファイル、森林破壊に加担していないことを証明するために提出が求められる、標準的な地理空間データ形式)の抜け道を探してきて、使用する天然ゴムの一部がEUDR合格品ではなくても、輸入できてしまうことをやるかも? ファイル形式も複雑で、それを判定するソフトウェアが完璧だとも思えないところがあります。

2025年11月にはブラジルでCOP2025地球温暖化対策の海外開かれています。森林破壊により温暖化がすすむとの声もあります。

実際たとえ更に6ヶ月延期したところで、木材、紙、牛肉のEUへの輸入で、EUDR規制が必要としている判定書(GeoJSONファイル)が準備できるとは思えません。延期ではなく、もっと簡素化するしか方法はないように思えます。または、対象品目別の簡易化のレベルを変えるか?しかしそれは森林破壊防止の効果を薄めることになります。木材、ゴム、パームオイルは確かに何らかの規制が必要でしょう。このままではEUではEU域内の牛肉は食べられなくなるのでは?和牛も食べられなくなる。難しい問題です。

EU地域にサンプルを国際宅配便(FEDEX, DHL等)で送る場合にも同じ規制が適用されますので要注意。天然ゴム、天然ゴム製品を送る場合には、デューデリジェンス宣言書(DDS)を添付しないと送れません。https://www.fedex.com/en-gb/service-news/deforestation.html しかし、どうやって製品の供給源となる土地の地理的情報(衛星画像など)、EUの森林破壊防止規則に準拠しないことに対するリスク評価を入手するの?

EUDR合格品は通常の天然ゴムより価格が高いです。これは事実です。ぜひゴム、タイヤ製品の最終需要家(自動車会社)はこのコストアップ分を認めてほしいものです。EU向けのタイヤ、天然ゴム製品と、また日本向けでも、そのタイヤ、ゴム部品がEU地域に輸出される車に搭載されるケースです。EUで販売されるタイヤは、EUで製造されるタイヤも、EUに輸入されるタイヤも確実に製造コストアップになっています。 自動車会社がこのコストアップを認めないということは、中小ゴム会社からの天然ゴム部品購入では下請法(交渉の拒否)になるのでは?