マーケット加藤’s EYE原材料(ゴム薬品)調達、購買資材

ゴムタイヤ業界 イラン戦争の影響(第六報)6月7日現在

イラン戦争がまだ膠着状態が続き、ホルムズ海峡が開放されるめどがまだ立っていません。実際日本のゴム、タイヤ業界はこれに対応して何がおこっているのでしょうか?

1)ゴム材料は不足して、生産が停止いたか?
 ゴムタイヤの生産は停止していません。原材料(合成ゴム、天然ゴム、カーボンブラック、ゴム薬品、繊維類、添加剤、その他)はなんとか供給がつづいています。日本の原材料の生産会社、原材料商社の努力によって、原材料のサプライチェーンは維持できています。やや心配なのは溶剤(トルエン、キシレン、MEK,)と加硫接着剤ですが、これも輸入玉等を手当てしたとか、やりくりをして、短期的にはなんとかなっているのが実態です。実際ゴムタイヤ製品のせいで日本の自動車生産が停止、減産したということもありません。自動車生産のなんとか維持されています。

2)原材料の価格は上昇したか? これはたいへん価格があがりました。これほど価格が急激に上がったことは第二次石油ショック以来です。合成ゴムは、平均40%以上価格があがりました。原料のナフサ、ブタジエンの相場価格(アジア価格、輸入ナフサ価格等)が3月から急騰しましたので、その原料コストが反映されました。日本のゴム、タイヤ会社の会社数で98%、流通量で95%は、すでに5月1日からの値上げが実施されています。日本経済新聞の5月22日の記事のとおりです。見出しでは合成ゴム大口5割高、ナフサ高騰、前倒し転嫁となっています。前倒しという意味は、本来は8月(一部7月)から、ナフサリンクで合成ゴム価格が大幅上昇するところが、今回は5月1日よりその価格改定がなされたということです。ゴム種によっては5割(50%)高くなりました。三井化学が先週追加で さらにEPDM(EPT)の約¥60/kgの値上げを通知しました。これで値上げ幅はENEOSマテリアルを上回りました。4月の国産ナフサ価格を考えるとやむを得ない、計算通りの値上げ幅になるでしょう。4月の輸入ナフサ価格が財務省より発表になり101,740円/KLでした。これを国産ナフサ価格に換算すると、¥103740/KLになります。1-3月の国産ナフサ価格は¥65700/KLでした。たぶん5月の国産ナフサ価格は4月の価格以上になると予想されます。4月のこのナフサ輸入通関価格はイラン戦争勃発前の2月までに成約されたナフサが4月に輸入されていますので、まだ安いころの分が入っています。5月の輸入ナフサ価格が、まさにイラン戦争勃発後、ナフサ相場が急騰してからのナフサが輸入されるから、もっと高い価格になるでしょう。

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合成ゴム以外のカーボンブラック、ゴム薬品等は、合成ゴムほどではありませんが、すでに値上がりが始まっています。5月のカーボンブラック価格は¥20-30/㎏程度上がりました。8月からはもっと大幅に上がると予想されます。ゴム薬品はすでに値上げが発表され、平均ではたぶん¥50-100/㎏程度の値上げになるでしょう。硫黄は海外で大幅値上げになっており(原料の石油からの硫黄が足りない)アジアでは¥80/㎏以上の値上げが始まっており、国内の不溶性硫黄も¥100/㎏強値上げになると思います。プロセスオイルは8月から大幅に値上げになるでしょう。

3)ゴム原材料の価格はいつ、どのぐらい下がるか?

ホルムズ海峡がいつ解放され、さらにいつ船の通行が自由に、今まで通りになるかです。まずは米国とイランが船の通行に対して合意されるのが、いつかになるのかが問題になります。米国の11月の大統領中間選挙までに、トランプ大統領は、ホルムズ海峡問題が解決されることをのぞんでいます。私の予想では7月末までにホルムズ海峡が開放されるのでは考えています。この場合、船の通行が従来どおりに戻るのが、9月末、そして安くなったナフサが日本に到着するのが、11月ごろだと考えています。よって通関統計で安い(価格が戻った)ナフサが現れるのが11月で、11月ぐらいから合成ゴムのナフサリンクでの価格が下がる可能性があります。もちろん合成ゴム価格は5月から先取りで上昇しましたから、ナフサ価格の下落が見込まれると、当然いつから合成ゴム価格がさがるのか?下げるのも先取りであろうとの交渉が始まるでしょう。

ナフサ価格は上るのは、今回は2週間で上がりました。確かに5月になり、アジアナフサ価格はピークを過ぎやや値下がりが始まっていますが、トランプ大統領の発言、イラン側の発言で、毎日価格が一喜一憂して上がったり、下がったりしています。しかし本格的に下がるのは、だらだら下がり模様で、3ヶ月かけて、ゆっくり下がるでしょう。 成約するナフサ価格はさがっても、それが船に積まれて、中近東から日本にやってくるまで、2ヵ月ぐらいかかり、合成ゴム会社の原料タンクにはまだ単価が高いブタジエン、C2C3が在庫として残りますので、合成ゴム会社として安くなったナフサ、ブタジエンを使用するのには、当然その先になり、時間差が生じます。

4)どこまで価格が下がり、戻るか?

これはいろいろな意見があります。ナフサ価格が前と同じレベルに戻っても、合成ゴムの価格が元に戻るか?元までは戻らないと考えているゴム会社が多いようです。ではどのぐらいまでもどるか?¥20~50/㎏ぐらいが最後に残る?、最後までは戻らないと考えている業界人が多いように思えます。どうして価格がもどらないのか?従来の価格フォーミュラ方式では、原材料のコスト変動は、合成ゴム価格に転嫁できますが、管理費、人件費、製造装置の修理費、メンテナンス費用、これらのコストの上昇(これらは本当に上昇してきています)が全くカバーされていない。これは現実です。ですから合成ゴム会社としては、これらのコストアップをユーザーに負担してもらいない。さもないと、事業継続ができないと主張するでしょう。 5月の値上げ交渉の時に、どこまで今後の値下げの取り決めをしたかがここに効いてきます。

5)ゴム製品の値上げがどこまではじまったか?

自動車会社向けのタイヤの値上げは、ある程度自動的に決まります。タイヤ販売価格が原油、ナフサ、ブタジエン、天然ゴム等の価格に比例した方式が広く採用されています。もちろんタイヤショップ、ガソリンスタンドで販売される価格は値上げになるでしょう。この部分は国内タイヤ会社はどこも同じような合成ゴムコストアップを経験しているのでしょう。問題は自動車ゴム部品が値上げできるかです。すでに交渉がはじまっています。これはゴム部品だけでなく、樹脂部品も同じ交渉が始まっています。自動車会社が今回の特別価格アップを認めるかどうかです。某自動車会社は今回は特別に値上げを認める方向で交渉が進んでいると言われています。他の自動車会社はどうか?これが話題になっています。しかし値上げを認めないと、財政的に苦境に陥る自動車ゴム部品会社もでてきてもおかしくありません。来年まで価格改定を待てません。干上がってしまいます。それほど今回のナフサ価格高騰による、ゴム部品原材料のコストアップが大きいのです。自動車部品以外の一般用、産業用ゴム製品も値上げが始まっています。これは樹脂製品、エラストマー製品も同じです。樹脂フィルム製品の値上げも連日新聞で報道されています。

6)海外でもゴム原材料の値上げは始まっているのか?

加藤は先週はインドネシアを出張し、11社の日系ゴム会社を訪問しました。どの日系ゴム会社でもゴム原材料の値上げが来ている。値上げを認めないと原材料が入手できない。日本から原材料を持ってきているので、まだ価格が安い在庫があるが、すぐにそれが、価格の高いものに置き換わる。ゴム原材料の現地製造品、中国からの輸入品も値上げが始まっている。溶剤は不足している。アジアでは、高い価格をOKすれば、まだ入手できるが、たぶん突然あるとき入手ができなくなるだろう。アジアではサプライチェーンの保全という考えが余りない。との意見が多かったです。 米国でもゴム原材料の値上げが始まっています。値上げ幅はアジア、日本よりは、小さいですが。米国のゴム練り会社によると、米国国内のゴム原材料も値上げがあり、またアジアからの輸入品は供給が少なくなっています。中国でも合成ゴムその他の値上がりが始まっています。よってゴム原材料の値上がりは日本だけではありません。世界中で起こっています。確かに原油、ナフサ、ブタジエンの値上がりは世界中で起こっています。特に日本、アジアで、その値上がり幅が大きいのです。

7)日本ゴム工業会での話題

6月6日開催の日本ゴム工業会幹事会と懇親会に加藤は参加してきました。日本ゴム工業会会長のあいさつでも原材料の高騰、供給不安により、ゴムタイヤ業界はいろいろと困難な時期に入っているとの話がありました。まさにその通りです。まさに、現在、原材料の値上がり、製品への転嫁、あと4月からの賃金値上げ、人手不足の課題があります。ゴム製品製造業が育成就労制度の対象業種になった話もでました。

ナフサ価格高騰がまだ続いています。まだいつ下がるか?どこまで下がるか?製品の値上げができるか?わからないことだらけです。しかし日本のサプライチェーンは強靭です。なんとかこれを乗り越えていくしかありません。