マーケット加藤’s EYE原材料(ゴム薬品)調達、購買資材

ゴムタイヤ業界 イラン戦争の影響(第五報)5月6日現在

イラン戦争の行方がまた見通せません。ホルムズ海峡は、まだ封鎖されたままです。

4月28日が出光興産の大型タンカー出光丸がホルムズ海峡を抜けましたが、これはイラン政府と日本国と出光興産の交渉結果によるもので、さらに日本国政府と米国政府との約束もあったと思います。これは現代版日章丸事件であり、小説「海賊と呼ばれた男」を地に行った話のようです。これは出光興産だからうまくいった話でしょう。その後残念ながら日本の船舶がホルムズ海峡を通過できたとの情報はありません。

      出光丸がホルムズ海峡を抜けた 2026年4月28日午後10時24分のMarineTrafficサイトより

ナフサが中近東から輸入できなくなると、日本の45%のナフサは途絶える。石油化学産業は止まる。樹脂も、合成ゴムも、溶剤も止まる。自動車生産が止まる。危機だといわれていましたが、政府、産業界、必死にサプライチェーンを守ろうとしています。その結果、ナフサは米国、アルジェリア、その他の国から、緊急輸入を始めています。なんとかつなぐ、止めない。必死です。南アジアの国の方が、この点で楽天的で、なくなったら仕方がない、止めるだけ。という感がします。

現在化学産業、自動車産業をみると、溶剤、特にシンナーとMEKが不足しています。シンナーはトルエン、キシレン、アルコール等を混ぜて作ります。名古屋地区の自動車T社経済圏では、毎週T社のTIER1関係者が集まり、TIER1の会社どおしでシンナーの玉融通をしているそうです。さすがですね。自社海外工場からシンナーを日本にもってくるとの話もあるそうです。

なんとか6月末までは自動車生産は止まらない。問題は7月以降だという情報がでています。確かにナフサクラッキングの稼働率が下がっていますので、石油化学製品(樹脂、ゴム、溶剤、可塑剤、薬品)の在庫が少しづつ減ってきているわけで、どこかで、在庫が切れてしまいます。その前にナフサ輸入量が中近東産抜きで以前の量までもどるか?これがキーです。

合成ゴムについていうと、SBR,BR、ブチル、IR,ともになんとか生産がつながっています。ENEOSマテリアル四日市(SBR,NBR)では原料源の四日市コンビナートが定修完了で、稼働を開始しています。日本ゼオン徳山(SBR,BR他)と川崎では実はブタジエンは十分持っていました。旭化成大分、川崎も原料は確保していました。輸入ブタジエンも使えます。 合成ゴム価格にはブタジエンコストが計算にありますが、実は日本の合成ゴム会社は輸入ブタジエンをほとんど使っていませんでした。(国内ブタジエン価格はアジアブタジエン価格を参考に設定しています)よって、急にブタジエンをアジア、中国から輸入したくても難しい面もあります。港も水深が浅く、アジアからの大型ブタジエンタンカーが入港できない。または実は港のバースと合成ゴム工場までブタジエン輸送のパイプラインがつながっていない。いろいろできないことがあるのです。

合成ゴムの供給は続いていますが、5月1日からすごい値上げが始まっています。通常であれば、5月からのフォーミュラ方式での価格変動はEPDMで+¥3/㎏で、SBR,NBR、BRでは約+¥20-25/㎏ぐらいの値上げです。通常であれば8月からはたぶん+¥130/kgぐらいの値上げになりそうですが、これは計算上の話です。それが今回だけは、5月から¥100から160/㎏ぐらいの値上げが始まっています。ナフサ価格がもとにもどれば、この値上げはなくなる。8月まで待てないので、前払いとしてお預かりしたいということです。

この値上げは実施され、ユーザーも受け入れざるを得ません。タイヤ会社も値上げを受け入れる意向だそうです。受け入れないと、合成ゴムの供給が保証されない事態です。

問題は値戻しする条件を、しっかり今決めておかないといけない。どの価格を基準にして、いつ、どのような計算式で、値段を下げる、変更するかです。5月からの特別値上げ分を面積で考えるか、単に単価差で考えるか?8月から数量が減る場合、面積で考えないと不公平。いろいろと今取り決める必要があります。

またナフサ価格が元のレベルに戻っても、実際に合成ゴムの価格が元のレベルに戻るかどうか、不安視している声があります。確かに過去の例を見ると、その不安もわかります。たぶんナフサ価格はずるずるゆっくり下がる可能性が大です。上がるときには急に数日であがりましたが、下がるときにはたぶん1から2カ月ぐらいかけて、ゆっくり下がるのでは? するとナフサ価格は成約時?輸入到着時?国内コンビナートの原料タンクから出ていく時の価格? ゆっくり価格が下がるとなると、これらを取り決めしていかないと揉めそうです。

さらに自動車ゴム部品の場合、この合成ゴム価格高騰が、自動車会社に対して、部品価格の値上げがすぐできるかです。通常価格は年1回の改定です。来年4月(1月)まで値上げができない?これではコストアップが大きいので会社が負担しきれないケースも考えられます。大手ゴム部品会社ではこのコストアップがたぶん数十億円になるでしょう。自動車会社がすぐに(少なくとも10月(7月)から)値上げを認めてもらえないと、ゴム部品会社の経営に問題がある部品メーカーも出てくるでしょう。これはゴムだけでなく、樹脂部品、金属部品の同様です。ゴムだけに話ではありません。タイヤであれば、数か月後にフォーミュラ方式でタイヤ価格が上がるでしょうが、ゴム部品は価格は交渉ベースです。ぜひ自動車会社が値上げをOKしてもらいたい。特にN社、H社です。

5月6日の日本経済新聞朝刊に自動車素材 軒並み高騰との記事があり、その中で、以下の通り、私加藤のコメントがあります。 今回はナフサの供給不足が収まれば元の値段に戻る前提の合成ゴムの値上げです。  

元の値段に戻るが前提ですが、いつ、どのように戻るかがキーになります。

この記事の最後の方に、ある素材関係者はナフサ不足が1年続けば自動車価格が10万~15万円上がるとみる。とありましたが、誰のコメントでしょうか? 平均すべての部品、材料が¥70/㎏上がったとして、自動車が1500㎏だとして、10.5万円UPか?さすがに1年間上がったままではないでしょうが。但し輸送コスト、ユーティリティーコストも上がっていますので、とてもコストダウンVAVEではカバーできないでしょう。この数字は3分間で回答した?

石油化学工業協会のサイトに以下のとおり原油から合成ゴムの原料がどう関係してくるかの図があります。参考までに載せます。