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ゴム商社マンの世界オフショット紀行⑭~狂気と幻想のアメリカ・ヒューストン

今回の訪問先はヒューストン。そこで、商社マンはアメリカの何を見たのでしょうか。狂気と幻想のアメリカ3部作の完結編。さっそく商社マンの手記を覗いてみることにしましょう。


2017年9月某日

米国ヒューストンに出張。現地の合成ゴムメーカーを訪問した。レンタカーで移動。もちろんカーナビのナビアと楽しいおしゃべりをしながらのドライブだ。 訪問後、時間ができたので、メジャーリーグ(MLB) ヒューストン・アストロズ対シアトル・マリナーズの試合を見に行く。

当日券だったので、100ドルぐらいしたが、自分としてはその価値はあったと思う。

ヒューストン・アストロズの本拠地球場であるミニッツメイド・パーク(Minute Maid Park、”The Juice Box”とも呼ばれる)に入ると、いまさらではあるが、米国人が野球をこよなく愛していることがよくわかる。野球に対してまさに熱狂するアメリカ人の姿がそこにあるのだ。その姿からは、彼らにとって野球は単なるスポーツではなく、それ以上の何かを感じる。やはり「アメリカ人にとって野球は特別なもの」なのであろうか。

米国人の知人に聞いた話だが、日本やヨーロッパの文化が長い歴史を持ち、不変であるのに対して、アメリカの文化は歴史が短く、しかも頻繁にその姿を変えている。どの文化も長く続くことはなく、また強い力を持つことはない。ファッションや音楽など、アメリカでは多くの物事が常に変化し続けている中で、唯一野球に関して彼らは変化を好まないのだそうだ。

たとえば、ユニフォーム。ソックスの上にはくストライプのストッキングなども昔から変わらず使用されている。1970年代、多くの球団がユニフォームやスタジアムを変更しようと試みたが、野球ファンからは全く支持されず、仕方なくまた昔のスタイルのユニフォームやスタジアムに戻した。バルチモア・オリオールズなどがよい例で。未だに昔ながらのスタイルのスタジアムとユニフォームを使用している。

多分に漏れず、ここミニッツメイド・パークでも、まさに昔ながらのスタイルで観戦を楽しんでいる。

試合開始前に全員立ち上がり、米国国歌斉唱。7回裏開始前にはお決まりの Take Me Out to the Ball Gameを歌う。ビールを飲みながら観戦。(帰り際ナビアにひどく怒られ、アルコールが飛ぶまでエンジンを始動させてくれなかった。)

ホームチームにホームランがでると、レフトスタンドに蒸気機関車が走る。これはこの球場の場所が昔は汽車の操車場だったかららしい。

野球観戦でアメリカの伝統文化に触れたのちに、アメリカの近未来を見学することにした。前から行ってみたかったNASA宇宙センターに行く。あの月面着陸の際に「こちらヒューストン」というセリフで有名な場所だ。

施設は、充実した見学者コースを設けており、発射台の設備やサターンV型ロケットも見学でき、その巨大さに驚く。仕事柄か、特に月面走行車のタイヤや、スペースシャルトルを運ぶNASA仕様のジャンボジェットのタイヤに目が行く。このジャンボジェットのタイヤはGOODYEAR製、ロケットサターンの輸送機のタイヤはBFGOODRICH製。タイヤメーカーを確認しながらの見学であった。

ここまでは、通常の見学コースなのだが、実は今回の見学は事前に特別見学コースを日本からサイトで予約しておいたので、通常見学できない場所を案内してもらえる。

心を躍らせてガイドについていった。すると、実際に国際宇宙ステーションを監視しているMISSION CONTROL CENTER管制室に導かれた。まさに目の前で、リアルに今の宇宙衛星などの管制をしている。

また進んでいくと、アポロ11号を月に着陸させたあの時の古い方の管制室も見学できた。よくテレビででてくるあの管制室だ。ブラウン管のモニター、旧型のスイッチ、すごい量の電線。そこに置いてある運営マニュアルをちょっと開いてみたら、すぐにガイドから怒られた。中国のスパイと思われたらしい。どこの国だと詰問されて、日本からだと言ったら、許してくれた。

アメリカ人が重視したのは個人の「自由」と神の前の「平等」だ。自由とは信仰と言論・表現の自由であり、国王や貴族による支配からの自由。支配者に抵抗することをいとわない。自由への思いはアメリカ人の魂。宗主国イギリスからの独立を経て、君主ではなく国民が主権者である共和制を憲法で打ち立てた。世界最初の立憲国家の誕生だ。そして、それに並べて重視する精神がある。それは、西へ西へと向かう「フロンティア(開拓者)精神」だ。

イギリスから新大陸に移り、「Manifest Destiny/白人文明の明白な天命 ※1」を合言葉に、先住民を追い払って西部を開拓し、太平洋を越えアジアに到達。やがてアジアへの進出をめざした大日本帝国と衝突することになる。同様にアメリカは宇宙へと開拓を進め、同じような歴史を繰り返すことになるのだろうか。

「スターウォーズ」がアメリカの予言書といわれる所以もあながち嘘ではないな。帰路の車の中ではそんなことをナビアに話していた。

※1 「文明は、古代ギリシア・ローマからイギリスへ移動し、そして大西洋を渡ってアメリカ大陸へと移り、さらに西に向かいアジア大陸へと地球を一周する」