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トランプ関税の影響

2025年4月2日に米国トランプ大統領が、すべての国からの輸入品に10%の輸入関税をかけ、さらに国別の相互関税(日本の場合は24%)を課す。また自動車、自動車部品、鉄、アルミ等の品目には25%の輸入関税を別に課す。という一方的な発表をしました。トランプ関税、トランプTARIFFです。それから1カ月、日本のゴム産業では何が起こっているでしょう。

ゴム産業でいうと、日本から米国への輸出は、タイヤが多いです。24年には954万本、1200億円のタイヤが日本から米国に輸出されました。ゴムホースだけで200億円ぐらい輸出されました。

ゴム関係者の話をまとめると、とりあえずトランプ大統領の最終的なトランプ関税がどうなるかわからないので、初めの2ヵ月ぐらいは様子見です。何もアクションを起こしていません。社内でいろいろなシナリオ、ケースを考えて、対応策を検討始めていますが、まだどれにするか決定していないようです。トランプ関税が結果どのぐらい関税をかけるかが決まらないと判断ができません。タイヤ、ゴム製品の製造拠点を、米国に移転するか?また日本以外の相対的に相互関税が低い国へ生産を移管するか?メキシコ拠点で生産させるか? いろいろ考えていますが、まだどれにするか決められないでしょう。

写真はドナルド・トランプ — 第45・47代アメリカ合衆国大統領 

 出典ウィキペディアより Official 2025 inaugural portrait of Donald Trump by Daniel Torok.

メキシコでゴム製品を製造して、米国に輸出する場合の関税もまだ決定していません。10+25%の関税がかかると言われていますが、このうち25%はまだ90日間保留されています。メキシコで作るゴム製品の原料は、かなりの部分は米国製です。EPDM,NBR,CRであれば、ほとんど米国製である可能性大であり、またカーボンブラックも米国製カーボンブラックを使用しているケースが多いようです。この場合、メキシコ製ゴム製品のうち原料が米国製の場合、その原料割合で、米国輸入時に関税が控除される仕組みになっていますが、実際どうやってその計算をするのかフォーミュラがまだ公表されていません。これでは計算できません。

またゴム製品の生産を米国に回帰させるとトランプ大統領は言っていますが、先月日本を訪問した世界No1のゴム練り会社HEXPOL社のMOORE社長と話す機会があり、同社長によると、米国は現在人手不足で、さらにゴム工場は相対的に作業環境がわるく、3K職場であり、新入工員がすぐに辞めてしまう。注文が増えても、生産を増やすことがすぐにはできない。ゴム産業でいうと、米国に生産回帰なんてとてもできない。海外進出した(多くの場合メキシコに進出)米国ゴム会社も正直困っている。 と言っていました。大統領が米国に製造業を戻すのだと言っていますが、現実は、米国で製造業を復興させようとしても、ゴム産業では難しい。自動車組立、半導体製造とは違います。

メキシコに進出した日系ゴム会社も、迷っています。迷うというよりも、トランプ関税が最終的に何%になるか。特にメキシコ生産分はどう扱われるかが決まらないと、自社の方針が決まらない。今は、いろいろなケーススタディをしているだけである。との声が大部分です。25%の輸入関税であれば、まだメキシコで生産したほうがいいとの声も多いようです。

生産を移管すると言いますが、自動車産業では4M変更といい、事前に販売先での試験、承認が必要になります。せっかく1年以上かけて米国工場からメキシコ工場での生産移管の承認をとり、実際にやっと生産移管したのに、それをまた米国に戻すとなると、また4M変更で、決定してからこれから1年間ぐらい承認にかかります。さらに多数のサプライヤーがそれを自動車メーカーに申請すれば、とても1年間で承認されないでしょう。となると、承認されたころにトランプ大統領の任期は残り1年? そうなると、じっとトランプ大統領の任期が終了するのを待つのも一手だという声も。

今年は本当にいろいろありそうですね。

話は違いますが、最近テレビCMで広瀬すずがAGC社の「250℃でも溶けないゴムがある」とPRしている。フッ素ゴムAFLASのこと(画面にAFLASと出てきます)ですが、250℃とは条件次第でしょう。AFLASは耐熱もいいのですが、他のフッ素ゴムとの比較では耐薬品性がよいところが特長で、さらに「溶けない」ゴムといわれても、溶けるゴムなんてありませんね。