今回の出張先はインド。いくつもの深遠な宗教を有するインドは、そこを訪れた人を哲学者にするといいます。さて、現地の人たちと踊り狂ったのちに商社マンに見えてきものはなんだったのでしょうか?早速ゴム商社マンのオフショットをのぞいてみましょう。
2017年2月某日
インドは合弁会社と工場もあるので、10年以上前から年数回は行っている。
10年前にはチェンナイ行きの国際線飛行機には日本人は2~3名ぐらいしか乗っていなかったが、今では成田からの便もあり隔世の感がある。
今回のインド訪問は、ゴム展示会への訪問も兼ねての出張だったが、このゴム展示会が面白い。ゴム材料やら機械やら、世界中のゴムに関するビジネス素材がなんでもそろっている。中国以外ではアジア圏No1の入場者数を誇るというのもうなずける。
いつもインドに来て思うのだが、インドの食事はカレーが基本。普通のビジネスホテルに泊まると、朝からカレー。たまにはパンと目玉焼きにサラダが添えられたアメリカンブレックファストが欲しくなるのだが、普通のビジネスホテルでは無理。どんなに慣れても1週間ぐらいいると大体おなかがおかしくなる。
俗にインドの水が悪いからそうなると言われているが、実際はそうではない。インドの油と香辛料で胃腸がやられるのだ。だから自分の場合長居はせずに、大体4日ぐらいで帰国するようにしている。これも数多いインド訪問から得た自己防衛の知恵なのだ。
ある日カレー攻撃に堪り兼ねて街の中華料理店を見つけて食べに行ったが、全部カレー味だった。絶望のあまり目を潤ませながら箸を口に運ぶ自分の姿を見て、そんなにおいしいのかと感激した店主が、サービスするからもっと食べろと大盛りの皿を持ってきそうになった時は心から焦った。
今回の出張のメインは合弁工場の開所式の参加である。合弁工場があるバローダは、車で行くとムンバイから8時間。国内便もあるが一日に5便ぐらいしかない。この工場では主にプラスチックコンパウンドを生産している。
開所式では加藤もターバンを巻いて、挨拶。それからインドの踊りに参加。
インド人は歌と踊りとともに生まれてきたと言われる。その言葉通りに「踊り」が大好きで、インド映画の音楽に合わせて激しく踊る。忘年会のような会社のイベントでは必ず踊るし、業務の一環で行う「決起集会」的なイベントでも踊りまくるそうだ。踊りに決まった型などはなく、ディスコのように思い思いに踊るので、自分も散々踊りまくっているうちに、インド人と一緒にインド音楽に合わせて踊ることにまったく抵抗がなくなってきた。
インドの人とともに踊っている時の一体感はたまらなく嬉しく楽しいものだが、その反面インドの人はビジネスにおいて厄介な人になる時もある。
インドでは、会社のために働くというよりも高給を得ることを目標に働く人が多い。仕事における価値観は至って個人主義的だと言われている。日本では周囲との調和を図りながら仕事を進める場面が見受けられるが、インドでは個人の能力や家族が何よりも大切だという風潮も一部にはあるようだ。だからというわけではないだろうが、インドは金の支払いがみんな悪い。インド英語は慣れてきたがまだよくわからないし、携帯電話だとさらに難しい。そんなことも加わり売掛金の回収に苦労する時も度々ある。
宗教が生活やビジネスに大きな影響を及ぼすインド。インドにおける宗教とは単に食べものを制限したり、結婚相手を縛ったりするだけでなく、その人の根っこを成す大きな存在であることに気づく。しかし、生活であり、道徳であり、ひとの人生そのものである宗教という土壌の上に、確固たる「個人」という植物が育っているところが、インドの懐の深さなのであろうか。