コンサルティング加藤’s EYE

南極雪上車のゴム履帯(キャタピラー)

東京都立川市にある、国立極地研究所にある南極北極科学館に行ってきました。ここには南極昭和基地で使われた雪上車が展示されています。説明によると、展示車は鉄製の履帯(りたい)(いわゆるキャタピラーですが、これは商標なので、ゴム分野ではクローラーと呼びます)は鉄製ですが、その後改良された大型雪上車SM505S型ではクローラーはゴム製になっています。雪上車の軽量化のためです。

 国立極地研究所 南極観測のカタログ13ページより

 

このゴムクローラーはどの会社が開発し、生産したのでしょうか?

このゴムクローラーの仕様は 運用温度が-60℃、保存温度(駐車時)が-90℃という耐寒性が非常にきびしいものです。

さてどんなゴム、配合がつかわれているのでしょうか? まさかシリコーンゴム製ではないですね。

このゴムクローラーはバンドー化学が開発したようです。バンドー技術レポートhttps://m.bandogrp.com/development/pdf/technicalreport_01.pdf が発行されており、またバンドー化学の前川悦治さんの報文 南極大型雪上車(SM100S)の開発、ゴム履帯の低温特性 が国立極地研究所学術情報ライブラリにあります。https://nipr.repo.nii.ac.jp/record/8784/files/KJ00000140072.pdf

これによるとこの温度要求値では 天然ゴムNRではガラス転移温度以下のなってしまうため、そのままでは使えず、NRにBRをブレンドして、可塑剤に工夫をしています。さらに日本合成ゴム(現ENEOSマテリアル)の特殊グレードT704(IRとBRのブレンド? )も試しています。これにより -70℃でも使えるゴムクローラー(履帯)が実現できるとしています。

このように南極雪上車とゴム産業とは関係がありました。それにしても、この低温性能は厳しい。さすが南極です。