AIの利用が日常あらゆる場面で当たり前になった今、AIに不可欠な半導体装置を構成する素材に注目が集まっています。その素材の一つとしてゴムが使用されていることをご存知でしたでしょうか? 今回のテーマは半導体製造製造に数多く使われている「特殊ゴム」のお話です。
まずは、半導体装置メーカー売上高トップ15ランキングを確認してみましょう。 日本勢が過半の8社にランクインしていることがわかりますね。

各メーカーが半導体装置に活用しているゴムですが、半導体装置は極めて厳しい環境の中での稼働が求められるので、その素材にも極めて過酷な条件求められます。耐薬品、耐熱、耐プラズマ性、真空などあらゆる条件に耐えられる素材でなければ、装置は正常に動きません。そこで、選ばれたのが、フッ素ゴム(FKM)とパーフルオロエラストマー(FFKM)です。
多く使用されているのはフッ素ゴム(FKM)でフッ素ゴムでも耐えれない場合にはパーフルオロエラストマー(FFKM)が使用されています。特にFFKMはゴム材料の“最高峰”とも呼ばれる存在です。
ではパーフルオロエラストマー(FFKM)は半導体装置のどの部分に使用されているのでしょうか?
以下の通りけっこう多くの部分に活用されています。
- プラズマ装置でのチャンバーのゲートバルブ
- シャワーヘッド周りのシール
- ガス供給系のシール
- 加熱ゾーンのシール
- ケミカルタンクのシール
- 配管接続部のOリングなど
半導体装置にFFKMが選ばれる理由は、その驚異的な性能にあります。
<長所>
- 最高レベルの耐薬品性 ほぼすべての化学薬品に耐えれるタフさ。
- 耐熱性は300℃級 連続使用で300℃まで対応できる驚異の耐熱性。
- 優れた耐プラズマ性 半導体製造のプラズマ環境でも劣化しにくい。
- 低アウトガス性 ゴムから発生するガスが極めて少なく、装置の汚染を防ぐ。
- 高いシール性(圧縮永久歪みが小さい) 過酷な薬品環境でもOリングやガスケットとして高い密封性を維持。
まさに半導体製造に生まれてきたようなハイスペックです。
しかし、高級素材であるFFKMも完ぺきではありません。その弱点も理解しておきましょう。
<短所>
- 低温性に弱い -10~-20℃で硬化しやすい。
- 価格が非常に高い 原料価格はなんと1㎏あたり50~100万円以上。
- 機械的強度は控えめ 配合の自由度が低く、強度面では一般ゴムに劣る。
FFKMメーカーの実情はどうなっているでしょうか?
FFKMは①成形品(完成品)として販売するメーカーと②原料(ポリマー・コンパウンド)を販売するメーカーの2つに分かれます。
<FFKM成形品(完成品)メーカー>
- QNITY(デュポンのエレクトロニクス分野):カルレッツ
- Greene Tweed(グリーンツイード):ケムラッツ
※製品のみ販売。原料販売はしておりません。
<FFKM原材料メーカー>
- AGC:プレミアムアフラス
- ダイキン:ダイエル
- サイエンスコ(旧ソルベイ):テクノフロン
- ユニマテック:ELTAS
※これらのメーカーは、ポリマーやコンパウンドとして原料供給を行い、各成型メーカーがOリングやガスケット、異形製品に成型加工します。
AIとゴムの関係性を俯瞰してみると…
世界的なデジタル化の加速を背景に、データセンター向けの大規模メモリーとAI処理不可欠な高度なCPUの需要が急加速しています。生成AIの普及やクラウドサービスの好調が続く中、半導体メーカー各社は設備投資を積極化しており、これを支える半導体製造装置の販売が堅調に推移しています。特に、微細化が進む前工程では、薬液・プラズマ・高温環境に耐えれる部材が不可欠になっており、装置メーカーや材料メーカーによると、過酷な環境下で使用できるパーフルオロエラストマー(FFKM)製のシール材の需要が急増しています。
最近では政府がフィジカルAI分野への巨額投資を決めました。複数の報道によると、政府は2040年度までにフィジカルAI分野に10.5兆円を投資する計画をまとめました。中長期的には半導体装置への投資も増える可能性が高いと思われます。
そうなると…そこで性能を重視した高機能ゴム材料であるフッ素ゴムやパーフルオロエラストマーの需要もさらに増えていくことが予想されます。 これからもAI産業には目が離せないですね。
参考写真:(パーフルオロエラストマーの原料ポリマー写真) ※ユニマテック(株)ホームページより抜粋




