今日の出張先はドバイ。1泊2日の出張であったにもかかわらず、仕事に観光に大忙しの滞在は相変わらず。しかし今回は、世界でも贅を尽くした都市で知られるドバイだからこそ、ちょっとした淡いホームシックを感じたようです。出張族の商社マンには珍しい出来事ですね。早速お話を聞いてみましょう。
2010年5月某日
再生ブチルゴムの原料であるタイヤの古チューブの買い付けでドバイに出張。中古タイヤチューブを輸入して再生ゴム会社に販売するのだが、弊社はその輸入買い付け量では日本一ではないかと自負している。 フライトは最近その高質なホスピタリティで話題のエミレーツ航空を利用したのだが、幸運にもエコノミーからビジネスクラスにアップグレードされ、さらに到り尽くせりのサービスを享受。ラッキー!
ドバイには早朝に到着。とにかく空港が豪華な建物なのには驚いた。仕事は午後からなので、いくら豪華とはいえこのまま空港内で時間をつぶすのも切ない。さて仕事までの時間をどう過ごそうか…。そうだ ドバイで一番高級なホテルとして有名な「ブルジュ・アル・アラブ」に行ってみよう。
そう思いついたのはいいが、どうやったらいけるか。同ホテルのサイトを見ると予約がないとホテルの敷地内にすら入れないという。さらに調べると、このホテルは最低でも1泊20万円はする。すべて部屋はメゾネットタイプの2階構造だ。たかだか半日をつぶすのにはあまりにも高額。他に方法はないものかと考えぬいた結果、朝食だけを食べに行けばいいのではないかと思いついた。早速ネットで調べまくる。夕食だと一人5万円ぐらいかかるホテルだ。メインレストランの朝食ビュッフェの値段を調べると…な、なんとひとり1.3万円。嘘のような値段だ。諦めかけたその時、地下にレストランがあることを発見。ここだと朝食が6千円。これだ!
空港から、まずネットでホテルの朝食を予約し、タクシーに飛び乗った。
軽快に疾走するタクシーの車窓に、やがてあのヨットの帆の形をした「ホテル ブルジュ・アル・アラブ」の独特な姿が近づいてくる。その敷地に入ろうかすると、確かにホテルの入り口のゲートで予約をもっているかどうかチェックされた。
いやはや、入ってみて驚いた。ロビーはどこそこも金ぴか。アラブ人はゴールドを好むというが、狩野派・長谷川派・琳派の金屏風の渋い金の美しさに慣れ親しむ日本人の感性には、ちょっと合わないかもしれない。しかし、内装もそうだが、入った早々ロビーの空間で妙な違和感に襲われる。宿泊客はもちろんのこと、従業員まですれ違った人間の7割は中国人だった。そしてこれから朝食をいただくレストランもまた、中国人だらけだったのである。宿泊客も中国人が多く、見受けたところ日本人家族がかろうじて1組いた程度。そう、ここはドバイではなく中国だったのだ。
さて、中国の皆さんに囲まれてとった朝食の味といえば…6千円の価値があったかどうかはご想像におまかせする。
朝食を終えてホテルから町に戻るが、ホテルには普通のタクシーがなく、リムジン型のハイヤーしかいない。仕方なく大型車で移動。まだ仕事の面会まで時間があるので、ドバイ・モールに行く。世界で最も高層のブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)に隣接するドバイ・モール(The Dubai Mall)はショッピング、エンターテイメント、レジャーのすべてを楽しめる世界最大のショッピングモール。1,200軒を超える小売店、2軒の大手デパート、何百軒もの飲食店が軒を連ねるドバイ・モールは、サッカー場200個分に相当する100万平方メートル以上もの敷地面積を誇るという。驚いたことに、モールの中にはなんとインドア―スキー場があり、人気がある。外は35℃なのに、このスキー場は0℃ぐらいだという。
UAEのアラブ人は 通常会社では毎日あくせく働かない。インド人とか他国の外国人労働者にその労を任せ、自分は書類にハンコを押すだけ。よってだいたい一日のうち数時間しか会社に出ない。だから午前中の平日のモールでも、大勢の家族づれのアラブ風の服をきた大柄のアラブ人が買い物をしている。まさにドバイ・モールこそ、ドバイの人々が集まるドバイらしい拠点なのかもしれない。
さて、観光はここまで。午後はタイヤチューブスクラップの倉庫にいって現物のチェック。 その他2件の仕事をこなして、それから得意先に、世界で一番高いビル「ブルジュ・ハリファ」の展望台に連れてってもらうことになった。展望台入場料が予約してひとり5千円ぐらいする。予約なしだと1万円。確かに展望台は高く周りがよく見える。ドバイの町の外はすべて砂漠。映画MISSION IMPOSSIBLEの舞台となったところだ。
今回の出張は1泊で、明日深夜便で出発。明日はほぼ一日空いてしまうのだが、どう過ごそうかと考えて、午前は旧市街地の見学、午後は砂漠を楽しむツアーに申し込むことにした。
翌朝の旧市街の散策では、港でダウ船といわれる昔からの貿易小型木造船をみる。今は帆を垂れてはいが昔のものと構造は変わらない。イランに輸出する日用品、家具、日本製電気製品などが積まれているとか。
午後からは、大型SUV乗り砂漠を走り回った。ドバイから20分もハイウェーを走ればまわりはすべて砂漠であるこの地。砂漠に入る時はタイヤの空気をわざと抜いてからはいる。そうしないと、砂でスタッグしてしまうのだそうだ。
夕方になればラクダにのったり、ベリーダンスを見たりして、アラブ風の夕飯をたべる。 夕焼けの砂漠を背景に、ちょっとアラビアンナイト気分を味わうものの、自然と口をついてきた歌に、自分ながら驚く。贅を尽くしたドバイの地に身を置くがゆえに、日本の質素な美と謙虚な人々への懐かしさがそうさせたのだろうか。もしかしたら長い出張生活の最中で、初めて味わう淡いホームシックだったのかもしれない。