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三井化学EPDM値上げ発表

2021年11月9日に三井化学がEPDMの¥40/kg以上の値上げを発表しました。これはナフサリンクでの価格変動とは別に特別に値上げをするという意味です。値上げ理由は「プラント高稼働を継続しているが、設備維持・補修コストの上昇に加え、原材料、副資材、物流費などの高騰により、EPT事業の採算を大きく圧迫しており、今後の事業継続および安定供給を確保するために、価格改定を実施することにした」とされています。いままで国内ではほとんどのEPDMユーザーは3ヶ月ごとに国産ナフサ価格変動をベースにEPDMの価格を決めてきました。今回はそのナフサフォーミュラーのベース価格を値上げをするということで、JSRの小口配送値上げにつづく、特別な理由での値上げになります。

住友化学が9月1日に2023年春のEPDM生産から撤退すると発表し、その理由が今後の生産設備の維持補修コストがかかるので、採算が合わないということでした。当然JSRも三井化学の同じ状況にあります。いままでのナフサリンクでの価格制度がこの制度を採用して10年以上たちましたが現状に制度設計が合わなくなってきたことを意味します。よく考えれば、今までのナフサリンク制の販売価格は主な原材料(エチレン、プロピレン)の原料価格変動は吸収できましたが、設備のメンテナンスコスト、物流コスト、工場の管理や販売コスト、副資材コストを考慮していませんでしたので、今回の値上げは当然です。加藤事務所の加藤は、住友化学がEPDM撤退を発表した後、いろいろなゴム関係の講演会で、必ず他のEPDM2社は原料フォーミュラー価格のベース価格自体の値上げを¥30から50/kgUPで行うを話してきましたからその通りになりました。米国では2021年1月からすでに¥120/kg以上のEPDM値上げが進行しています。欧州でもそこまではいきませんが値上げが進行しています。いまや日本のEPDM価格が世界で一番安いレベルになりつつあります。インド、中国でのEPDM価格より安く、世界の平均的なレベルから日本の大手EPDMユーザーの価格の方が20%以上安くなっています。

 こう考えると、プラントの設備メンテナンス費用があがってきていることは、何もEPDMだけでありません。NBR,SBR,BR,IRその他の合成ゴムもフォーミュラー価格になっている価格制度は同じことが言えるでしょう。もちろん現在の採算があっているか?世界的にマーケットがタイトか?今後の増産計画があるか?戦略的みてその合成ゴムはどういう将来があるか?等の背景によって変わると思います。また化学会社にとってのその合成ゴム事業の立ち位置によって変わってくるでしょう。今後原料フォーミュラー価格に、需給バランスや設備メンテナンスコストを考慮してフォーミュラー価格の式を毎年交渉で決めていくことが一般化するかもしれません。某タイヤメーカーではすでにそのやり方をずっと前からやっているのですから。